025-05-28 改訂
昨日、顧問税理士に言われて飛び上がった一言
「一般社団法人には株式会社みたいな“資本金”って、そもそも存在しませんよ」
──え? じゃあ、どうやってお金を入れるの?
法人格が必要なのはわかっていても、資金注入のルールや組織設計が曖昧だった過去の自分に喝を入れるべく、改めて最新情報を総点検しました。今回の焦点は ①会費モデルの導入 と ②理事会を置かない最小構成(非設置型) の二つ。実務でつまずきがちなポイントを、町おこし当事者目線で丸裸にします。
1. 一般社団法人とは?――おさらい3行
- 株主なし、持分なし。 出資額に応じた権力は生まれない。
- 非営利目的で設立可。 ただし収益事業を行い法人資金に充当してOK。
- 利益不分配ルール。 だからこそ公共性と信頼感が生きる。
皮肉めいた話ですが、「儲けても配当できない」構造が、地域からは逆に好感度バフをもらえます。
2. 「資本金ゼロ」で資金を呼び込む6ルート
(復習+小改訂)
ルート | 概要 | 実務ヒント |
---|---|---|
① 設立時拠出 | メンバーが任意額を寄附。返還義務なし。 | 定款に「設立時財産額」を明記。初期運転資金◎ |
② 会費モデル | 会員区分を設け年会費を徴収。 | 今回のメインテーマ:次章で詳述 |
③ 基金制度 | 将来返済を前提に資金調達。貸借対照表では負債。 | 大口支援者・企業向け。契約書必須 |
④ 借入 | 個人/金融機関から。 | 収益事業を分離し、返済原資を論理立てる |
⑤ 寄附・スポンサー | 地元企業CSR・個人の共感資金。 | 税控除は不可。不特定多数を巻き込むストーリー設計 |
⑥ クラウドファンディング | 寄附型/購入型いずれも可。 | 映像・ビジュアル命。「PR+資金調達」一石二鳥 |
3. +1:会費モデル を骨太にする5ステップ
- 会員区分を決める
- 正会員(議決権あり)、賛助会員(議決権なし)など。
- 町民・企業・学生など属性別にすると巻き込み力アップ。
- 年会費の設定
- 目安は「想定事業費 ÷ 必要会員数」。
- クレカ/口座振替/PayPay等の“自動課金”を用意=継続率↑。
- 特典設計
- イベント先行案内・限定グッズ・活動報告書のネタバレ版など。
- 原価<提供価値が絶対。現場ツアーは鉄板。
- 会計処理と開示
- 会費収入は原則「非収益事業」勘定へ(税法上の取扱注意)。
- 年次報告書に収支内訳をキッチリ載せ、透明性を見せびらかす。
- コミュニティ運営
- Slack/Discord/LINEオープンチャットで日常的に接点。
- 退会率は「情報空白時間」の長さに比例。月1タッチが最低ライン。
豆知識:会費モデルは結局「サブスク事業」。LTV最大化の発想を移植すれば運営が楽になります。
4. 理事会を置かない〈非設置型〉――最小構成と落とし穴
区分 | 法定最小人数 | 補足 |
---|---|---|
社員 | 2名以上 | 個人でも法人でも可。理事と兼任OK。 |
理事 | 1名以上 | 代表理事を兼ねてもOK。理事会を置かなければ「3名要件」なし。 |
監事 | 任意 | 理事会設置・会計監査人設置・負債200億超のいずれかで必置。ここでは不要。 |
会計監査人 | 任意 | 大規模法人でなければ通常不要。 |
イメージ:社員2名(うち1名が代表理事兼務)+監事ゼロ。これで登記は通ります。
4-1. 非営利型(税制優遇)を狙うなら
- 理事3名以上+親族関係1/3未満 が前提条件。
- 理事会を置くか否かは自由。ただし置くなら監事1名追加が必須。
4-2. メリット vs 注意点
メリット | 注意点 |
---|---|
・役員1名でOK=人件費ミニマム。 | ・チェック機能が弱い。資金流用リスク↑ |
・理事会開催義務なし。意思決定スピード最速。 | ・金融機関・補助金申請で「ガバナンス体制」を問われがち。 |
・定款と登記書類が少なく、設立期間が短い。 | ・将来理事会を置くと定款変更+追加登記コスト。 |
資金管理リスクを減らす3つの処方箋
- 二段階承認フロー
- 代表理事+社員1名のダブルチェックで振込実行。
- クラウド会計+オンライン閲覧権限
- 社員全員が月次残高を見られる状態をデフォルトに。
- 外部アドバイザー(税理士・弁護士)月次レビュー
- 「第三者が見ている」だけで不正は8割減(体感)。
5. 設立▶資金受入▶運用――改訂版ロードマップ
- 定款作成
- 事業目的に〈町おこし事業〉〈会費・基金・寄附〉を明記。
- 非設置型なら「理事会を置かない」条項を忘れずに。
- 公証役場認証 → 登記申請
- 登録免許税6万円/オンライン申請なら印紙代不要。
- 口座開設
- ネットバンクで即日審査→地域銀行で補助金用の別口座を。
- 資金受入
- 会費規程・基金契約書・寄附受領書のひな形を先に準備。
- 会計&情報公開
- 収益/非収益を科目分け。活動計算書+財産目録をWeb公開。
6. よくある誤解 & 即答テンプレ
- Q. 資本金ゼロでも回るの?
A. 初期運転資金は寄附・会費・基金で調達すれば問題なし。 - Q. 出資すると配当がある?
A. 一般社団法人は利益不分配。金銭的リターンはゼロ。 - Q. 寄附したら税控除?
A. 認定NPO法人以外は控除対象外。情熱は控除されません。
7. まとめ ――一般社団法人は町おこしに最適な“器”
- 資本金不要×利益不分配 だからこそ公共性を担保。
- 会費×寄附×クラファン×基金×借入 をハイブリッド設計し、地域の未来へ“投資エコシステム”を構築せよ。
- 非設置型+会費モデル でスモールスタートし、規模拡大時に理事会・監事を増設する“段階的ガバナンス”が王道。
本記事は2025年5月現在の法制度に基づいています。実務適用の際は最新の法令・通達を必ずご確認のうえ、専門家へ相談することを推奨します。
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